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IDOM中澤氏が描く未来のマーケティング像。いま、コミュニケーションデザインに注力する理由【前編】

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企業のマーケティング担当者と現在のマーケティングの取り組み・課題を語りながら、「人の心を動かす」マーケティングについて考えるインタビュー企画第三弾。
今回は、株式会社IDOMのデジタルコミュニケーションセクション/リーダーの中澤伸也さんにお話をお伺いしました。前編・後編の2部編成でお届けします。

プロフィール


中澤 伸也  (なかざわ しんや)

株式会社IDOM
デジタルコミュニケーションセクション セクションリーダー

家電量販店ソフマップに入社し現場経験を積んだのち、2000年にECリニューアルプロジェクトに参画し、「日経EC大賞グランプリ」を獲得。2006年にゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、マーケティング部責任者を担当。2013年にエクスぺリアンジャパンに入社、CMOの経験を経て、現在IDOMにてデジタルコミュニケーションセクションのリーダーとしてチームを率いる。

 

マーケティングとコミュニケーションの関係。デジタルコミュニケーションセクションの役割とは

-本日はIDOMにおけるマーケティングの取り組みと課題についてお伺いいたします。まずは、中澤さんが担当されている業務やチームの役割を教えてください。

マーケティングにおいて重要な事は以下の3点であると考えています。まず、ユーザーに提供すべき「提供価値(バリュープロポジション)」があり、それが明確なこと。次にその価値を伝えるべきユーザーに「リーチ」できること。そしてその価値をユーザーに正しく伝える「コミュニケーション」をとることです。

当社では狭義のマーケティングである「プロモーション」での「リーチ」の精度をいかに高めるかという点において、既にやり尽くした感がありました。また「価値を正しく伝える」という点においても現在のバナーやLP、動画広告等での伝達力に限界を感じており、ユーザーにより正しく価値を感じてもらうための方法を模索してきました。

現在は、もう一歩先を目指しており、ユーザーに新たな付加価値を提供する、すなわち「新たなバリュープロポジションの開発」そのものに、活動の中心が移ってきています。それを行っているのがデジタルコミュニケーションセクションです。

 

-デジタルコミュニケーションとは、具体的にどのようなことを行っているのでしょうか。

接触したお客様とのコミュニケーションが一番大きくコンバージョンのカギを握っており、重要なものだと思っています。

具体的なコミュニケーション方法としては2つあります。一つは「クルマコネクト」というチャットサービス。もう一つは、「ガリバーオンライン」というアプリです。

-さきほど「『リーチ』や既存のコミュニケーション手法における『伝える』ということに限界を感じた」とおっしゃっていましたが、どうしてそう思ったのでしょうか。

長年デジタルマーケティングをやってきて感じたことですね。マーケティングを考える上で、お客様にとってインパクトをもつことを実現しようすると、単純に集客だけやっていても、成果に結びつきませんし、またお客様に付加価値までは提供できません。

一般的なデジタルマーケティングでできることは、ターゲットのセグメントに接触するために「いかにリーチを広げるか」、「どのような訴求で振り向かせるのか」が範疇です。その施策として、SEOやリスティング、広告や認知媒体をつかったリーチの拡大がありますよね。

つまり、この部分は「戦略」ではなくて「戦術」の磨き上げでしかありません。このような戦術で動かせる変数というのは、おおよそ限界値があります。マーケティングが事業全体に対してインパクトを与える数値は少ないです。

マーケティングにおいて本質的なことをやっていこうとすると、プロモーションの先には付加価値そのものを生み出す、というところに向かわなければならない。このことを、長年マーケティングをやってきたなかで感じましたね。

 

チャットコミュニケーションは「営業接客」。PDCAを回すための仕組みとは?

-コンバージョンの鍵を握るサービスとして「クルマコネクト」があるということでしたが、チャットでのコミュニケーションは人力だとお伺いしました。

はい、車のレコメンド機能はAIを用いていますが、基本はチャットアドバイザーが人力で行います。

 

(左)AIロボット「チャクト」との会話(右)チャットアドバイザーとの会話

 

-その場合、かなりオペレーターに高度なコミュニケーション力が求められると思うのですが、そういった部分のノウハウや、チームを回していくための仕組みはありますか?

人力のチャットコミュニケーションは、つまりは「営業接客」です。

この営業コミュニケーションのPDCAを高度化させるために、「コミュニケーションマップ」というものがあります。
コミュニケーションマップでは、「なにから話してどこへ着地させるのか」という一連のコミュニケーションのプロセスがすべて定義され可視化してあります。

 

-コミュニケーションマップというのは、具体的にどのようなものですか?トークスクリプトが分岐しているようなものでしょうか。

コミュニケーションマップとトークスクリプトは厳密にいうと別の扱いです。コミュニケーションマップは、話の組み立て・構成を定義したものです。まずお客様になにをヒアリングするか、その次にはどういう疑問を投げかけるか、このような話の構成をプロセスとして定義しています。

 

もう一つのトークスクリプトは、「何を話すか」具体的な内容が書かれているものになります。例えばコミュニケーションマップの中で「セールスポイントを話す」という定義にたどり着いたとします。セールスポイントといっても、お客様によって求めているポイントは様々なので、そこでどんなことを話せばよいかが書かれているのがトークスクリプトです。

トークスクリプトのより大きな会話の構成がコミュニケーションマップになっていて、この2つがPDCAを回すことが基本です。

 

数値化することではじめて明確になる、ゴールへの道筋。

-チャットでの営業接客を可視化し、PDCAを回すのですね。そのようなPDCAの中で、コミュニケーションの勝ちパターンは数値的に見えてくるものでしょうか。

非常に難しいですね。KPIとKGIの設計は、Webのファネルようにうまくいきません。

例えば、チャットにおいて、チャット発話率>複数回発話率>コンバージョンというファネルがあるとすると、通常は複数回発話率を上げると、後ろのコンバージョン率も上がるはずですよね。しかし、会話だとそうはならないです。複数回発話率をあげる施策を打ったとしても、次のプロセスのファネルの数値が下がってしまうこともありえます。

 

-次のファネルの数値が下がるというのは、例えばどのような場合でしょうか?

クルマコネクトにおいては、店頭でお車を購入していただくこと、すなわち「受注率」が最終的なKGIとなります。ただ店舗の商談に関しては、基本的には僕たちは関与できないので、まずはお店に行っていただくこと、つまり「来店承諾率(=アポ率)」を直接的かつ最終的なKPIとしておいてマネジメントしています。

そこで一度、来店承諾率を高める方向に方針を振り切ったことがありました。ここの成果を上げるのは比較的簡単です。まずはお客様に寄り添って相談を聞き出し、その気持ちに的確に答えていきながらも、肝心のお車の提案はできるだけ行わず「それは店舗で専門の営業マンにぜひご相談ください」というスタンスで「店舗に行くべき理由」を残して接客します。

これにより、来店承諾率は劇的に向上させることができたのですが、来店後のお客様の受注率が大きく下がってしまいました。

-受注率が下がった理由は何でしょうか。

すごく単純なことですが、クルマコネクト上でお客様の検討段階が煮詰まらず、商品や価格、保証等に対する納得度が形成されないままお店に行くことになるので、その場で判断できずに受注までに至らなかったということです。

ここがとても難しいところで、クルマコネクトである程度までナーチャリングを行わなければ、結果的に受注にまでつなげることができない。
かといって、来店前に相談に乗ればのるほど、「店舗にいく理由」がなくなっていく。お客様からすると、チャット上でほとんどの相談が解決しているので、実際店舗にいったときに「あれ、店に行く必要あったかな?」と感じてしまうんですよね。

なので、どのレベルまでチャットであたためるべきなのか、というところがノウハウになってきますし、バランスが難しいですね。

 

-実際に来店したお客様の心理までを考え、チャットコミュニケーションのバランスをとることが重要なのですね。

そうですね。目の前の指標に対して注力しすぎると、必ずその後ろの数値が落ちて全体の数値も落ちてしまいます。KGIである指標は店舗受注率です。

このKGIをみながら一番近いKPIをいかに変動させていくか、もしくはここに直接的に関連するKPIをどう探していくかという作業から、部分最適を行っていかなければなりません。ここは、いわゆるマーケティングオートメーションのシナリオのPDCAに近い考え方をしていると思います。

あくまで一番後ろの受注率というKGIを右目で、来店承諾率をどうあげていくかを左目でみて施策を打っていかなければならないですね。

 

<後編>チャットコミュニケーションにおけるユーザーの「心」との向き合いかたとは?
↓↓↓

 

●株式会社IDOM

 
1994年に創業し、現在中古車店「ガリバー」を全国550店舗運営。中古車買取台数、販売台数ともにNo.1(※)のリーディングカンパニー。
「ガリバー」だけでなく、チャットで気軽にクルマ相談が行える「クルマコネクト」や月額定額乗り換え放題サービス「NOREL(ノレル)」、個人間カーシェアサービス「GO2GO(ゴーツーゴー)」など、時流に合わせた、クルマがある様々な暮らしを提案し、新たな価値の創造に挑み続けている。

 
●HP:https://221616.com/idom/
●クルマコネクト:https://221616.com/connect/
●採用情報:https://221616.com/idom/recruit/
 
※1 2018年9月、(株)日本能率協会総合研究所調べ(国内中古車買取市場の大手買取専門業者を対象とした「中古自動車買取台数No.1調査」より)
※2 2018年9月、(株)日本能率協会総合研究所調べ(国内中古自動車販売業の主要小売企業を対象とした「中古自動車販売台数No.1調査」より)

 

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