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マズロー欲求五段階説が示唆する、フェイスブック・インスタグラムの未来とは?

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心理的成長の過程をシンプルに示す「マズローの欲求5段階説」は、マーケティングの世界でもとても有名だ。今回は、この欲求5段階説を用いて、これからのSNSの未来について考えていきたい。

「マズローの欲求5段階説」とは、人間の基本的欲求を図のような5階層に構成したものである。基本的に低次の欲求からスタートして、その欲求が満たされると、一階層上の欲求に関心が移っていく、という実に簡単明瞭な理論。シンプルさ故に、マーケティングのプレゼン資料などにしばしば重宝されている。
なお欲求5段階説の解説は巷に溢れているので、ここではその詳細については省略させていただく。

 

 

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・マズローの欲求5段階説をこの上なく丁寧に解説する。あなたの欲求はどのレベル?
https://jibun-compass.com/maslow

欲求五段階説が1943年に発表されてから長い年月が経っているが、実験や調査等によって検証されたという話を私は寡聞にして知らない。
しかし、実際にこれだけ定着し重用されているという現実に即せば、その正しさは社会的に証明されていると考えても問題は無かろう。

ちなみに、トリビアの類だが、異を唱えた有名な心理学者が存在しなかったわけではなかった。実はその人こそマズロー本人で、晩年になって「自己実現欲求の上に自己超越欲求がある」と提唱し始めた。ただし、理論的に正しいかどうかよりも、自己実現をゴールとする方が使い勝手が良いことがあってだろう、この新説が広まることは無かった。

 

欲求が生まれる背景にはなにがある?

さて、欲求が生まれる背景に恐怖やリスクを見出すと、この五段階説はさらに一層興味深い。

マズローは、人間の最も基本的な恐怖として「死」を想定したと考えられる。だからこそ、自身の死から逃れたいとする生理的欲求や、家族の死や種の死滅のリスクを少しでも減らそうとする安全欲求を、まずは基本的な欲求として設定したのだろう。さらに高次の欲求として、マズローは社会的欲求(帰属欲求)と承認欲求を置いた。それはすなわち、人間は死からひとまず解放されたら次に恐れるのは「孤独」である、という彼自身の恐怖観が色濃く反映されているように思われてならない。

私は五段階欲求説そのものよりも、この「人間は死の次に孤独を恐れる」という卓見に実は強く惹かれている。やや文学的表現になるが、「孤独とは心の死」と言い換えることもできよう。

 

承認欲求を満たす、SNS。しかし、社会的欲求を充足できるのか?


そこで、改めて現在のSNS人気を振り返ってみたいのだがFacebook、Instagramの「いいね!」やTwitterの「お気に入り」に代表されるように、SNS上で他人から好評価を得たり褒められたりすることが、承認欲求の充足に役立っているのは間違いない。しかし、その下の階層の社会的欲求(帰属欲求)は満たされているのだろうか?

SNS上で他人から好評価を得たいがゆえに、見栄や虚勢を張った「ウザい」投稿で溢れがちになるのはある意味当然だ。2017年の流行語大賞に「インスタ映え」が選ばれたことはまだ記憶に新しいが、「イケてる自分」をアピールするのに一所懸命な投稿がSNSでは目立ちすぎて、閲覧していて精神的に疲れてしまったり、疎外感を感じたりする人々も多いのではなかろうか。
少なくとも私自身はそうだ。最近では「SNS疲れ」「SNS離れ」という語句もよく見るようになった。

 

※SNSユーザーの30.4%が疲れを原因として利用中止や退会を経験
https://www.asmarq.co.jp/mini_research/mr201903sns-tired.html

 

そこで冷静に考えてみると、このような状況で社会的欲求(帰属欲求)を今のSNSで充足することは果たして可能なのであろうか。

社会的欲求(帰属欲求)は簡単に言うと、「何か集団に属したり仲間とのつながり・絆を求める」ことで、承認欲求よりも低次に置かれている。すなわちマズローによれば、社会的欲求(帰属欲求)が満たされたのちに、はじめて承認欲求が生まれるはずだ。
しかしながら今のSNSは、社会的欲求(帰属欲求)を置き去りにしたまま、承認欲求ばかりが肥大化している歪な存在とは言えないだろうか。
最近の「SNS疲れ」「SNS離れ」現象は、「インスタ映え」に象徴されるような承認欲求全開のSNSが衰退するサインであると同時に、社会的欲求(帰属欲求)へと回帰するプロセスなのかもしれない。

 

「しゃべり場」の質が重視されるWEBマーケティングへ

 

しかし、だからと言ってSNSそのものが無くなるとは、私は全く思っていない。
社会的欲求(帰属欲求)をシンプルに充足すべく、飾らない日常生活や気持ちを仲間と共有化しつつ相互に共感しあえる次世代SNSに変身していくように考えている。
それはザクっと言うと、今の「自己アピールの場」から、「しゃべり場(井戸端会議)」へ。オンラインサロンや、一周回って、かつてのmixiのようなSNSが最先端になるように思われてならない。

そして、もしもSNSがしゃべり場型へシフトすれば、WEBマーケティングも大きく変わっていくことになろう。
例えばネットショッピングの消費者ベネフィットは、総じて利便性や機能性で捉えられることが多い。しかしネットだから実現できる対話や交流を通じて、顧客同士や顧客・企業間の共感を生み出すことこそが、ネットショッピングの真のアドバンテージであるはずだ。

これからのWEBマーケティングを考えるとき、その提供価値が利便性から共感性へシフトするとともに、しゃべり場の質がビジネスの成否を決める時代がすぐそこまで来ているのではなかろうか。

 

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四元 正弘(四元マーケティングデザイン研究室)

四元マーケティングデザイン研究室 代表
1960年神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業。
サントリー(株)でワイン・プラント設計に従事し、発明協会賞を受賞。 1987年に電通に転職。メディアビジネスの調査研究やコンサルティング、消費者心理分析に従事する傍らで筑波大学大学院客員准教授も兼任。
2013年3月に電通を退職し独立、現在は四元マーケティング研究室代表を務める。

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