デパートなどの福袋や特別セールでお客さんが、商品を取り合う姿がテレビのニュースで流れることがあります。なぜこのように購買意欲を掻き立てられるのでしょうか?
その原因の一つは「希少性と心理的リアクタンス」にあります。
今回は、希少性と心理的リアクタンスで購買意欲を掻き立てる方法について検討していきましょう!
購買心理を掻き立てる「希少性」の実験
ダイヤモンドや金はなぜ高いのでしょうか?
それは、生産量・流通量が少ないために、価値が高く感じるからです。これを希少価値と呼んでいます。
心理学における「希少性」とは品不足になると価値が高いと感じ、手に入れたいという欲求が強くなる現象です。
こんな実験例があります。
実験の被験者たちを2つのグループに分けイタリアンレストランへいった。
Aグループにはメニュー表に「カルボナーラ30食限り」というメニューペーパーを挟み込んだ。
Bグループには、このメニューを挟まなかった。
その結果は、ご想像の通り、Aグループでカルボナーラを食べた人の方が、Bグループで食べた人より美味しいと評価したのです。
「残り少ない」という希少性が、 “感覚”に影響して、美味しさを感じさせたことがわかります。残り少ないことが価値を高めたのです。
品薄になると、購買心理が高まる理由は「心理的リアクタンス」
希少性の効果に関する心理学的裏付けは、心理的リアクタンスによるものだと考えられます。
リアクタンスとは、“反発・抵抗”という意味です。
心理学者のブレーム, J. W. によって見出された心理で、私たちは自分の意思通りに判断したいという欲求を持っており、この欲求が阻害された場合、人は自由を取り戻すために反発します。こうした心理のことを心理的リアクタンスといいます。
例えば、「ロミオとジュリエット」では、親や周囲の人々が二人の恋愛に反対しました。このことがふたりの恋心を逆に燃え上がらせてしまいました。この現象を前出のブレームが調査をして、反対するカップルほど燃え上がることを証明しました。そして、ブレームはこの現象を「ロミオとジュリエット効果」と名づけました。恋愛する自由を阻害されると心理的リアクタンスが働き、逆に燃え上がるのでした。
同じように、商品が品薄状態になると、顧客は購入するという自由を阻害されることになり、それに反発して、購入マインドが高まり、購買行動に移りやすくなるのです。
過去の事例が物語る希少性の強さ
心理的リアクタンスの強さに関して、過去には植民地が本国からの抑圧に耐えかねて、独立戦争を起こすことがありました。
また、日本では農民一揆や米騒動など、人々が命を懸けるほどの出来事がありました。それほど、心理的リアクタンスは強烈に作用するのです。
経済史においても「だっこちゃん」「フラフープ」「たまごっち」「トイレットペーパー」「ドラゴンクエスト」「ファミコン」「お米」などが社会的な話題となり、我先に品薄の商品を購入するための騒動がありました。
話題になった「ポケモンGO」でも、レアキャラを求めて多くの人達が殺到する姿がテレビ映像で紹介されました。これも希少性の原則が働いた結果だと言えます。
このように、希少性は私たちの行動に強く影響を与えることになるのです。また、希少性の原則に加え、我先にという競争意識が働くと、更に購買マインドは強くなることがわかります。
「希少性の原理と心理的リアクタンス」を使用するコツと注意点
さて、この強烈な心理をビジネスに使用する方法ですが、意図的に品薄状態を作り出すことです。行列のできるお店の多くは、製造個数が限られています。「早くしないと売り切れてしまうよ」というメッセージを内在させるのです。
具体的には、「限定○○限り」「製造個数は1日500個です」「スープが無くなり次第、終了します(ラーメン屋さん)」などという張り紙です。レストランなどの場合、前述のイタリアンレストランでの限定メニューの挟み込みもそのひとつです。また、スーパーの例では、「タマゴ、限定100パック限り」などの安売りをしますが、タマゴコーナーに「現品限り」と表示すると、残りの商品がダイレクトにわかりますので、更に効果は大きくなります。
WEB広告では「売切れ次第、キャンペーンは終了します」「この期間を逃すと、この割引はなくなります」「年に一度の特別価格」という具合に、単刀直入に顧客が商品を購入する自由を奪うのがこのテクニックを使うコツです。
しかし、頻繁にキャンペーンや安売りを行うと、顧客はそれに慣れてしまい。キャンペーンや安売りを待って目的の商品を買い求めるようになり、利益が薄くなる危険があります。
また、テレビCMでよく見られる例ですが、「販売10,000本を記念して、特別キャンペーン」とアナウンスしながら、同じCFを一年以上流し続けている例があります。これでは、希少性が働くわけがなく不信感すら持ちますので要注意です。
まとめ
・「希少性」とは品不足になると価値が高いと感じ、手に入れたいという欲求が強くなる現象
・「希少性」の裏にあるのは、欲求が阻害された場合人が自由を取り戻すために反発する心理である「心理的リアクタンス」
このテクニックは使用範囲も広く、あなたの会社や店舗で使用できるか否かはあなたのアイデア次第です。
心理的リアクタンスをベースとした希少性の原理を使用して、希少性に挑戦してみてはいかがでしょうか?
参考文献
影響力の武器 実践編 R・Bチャルディーニ 誠信書房
図説雑学 社会心理学 井上隆二・山下富美代 ナツメ社
衝撃の実話: 人間のありえない行動と7つの心理トリック 村田芳実 ごきげんビジネス出版